
室蘭やきとりはなぜ豚肉と玉ねぎ?1937年の由来と文化庁「100年フード」認定【札幌から車で】
「やきとり」と名乗っているのに、串に刺さっているのは豚肉と玉ねぎ。仕上げは焼き鳥の定番・七味ではなく洋がらし。室蘭やきとりは、初めての人が必ず一度は「え、鶏じゃないの?」と戸惑う、北海道・室蘭市のソウルフードです。
なぜ豚肉なのか。なぜ長ねぎではなく玉ねぎなのか。答えは1937年(昭和12年)の室蘭で起きた出来事までさかのぼります。そして2026年2月、室蘭やきとりは文化庁の「100年フード」に認定されました。この記事では、由来から認定の話、札幌から車で食べに行くときの注意まで、一次情報で確認できたことだけをまとめます。
「やきとり」なのに豚肉。室蘭やきとりとは
推進団体の室蘭やきとりの会は、室蘭やきとりを「豚肉」「タマネギ」「串」「タレ」「洋がらし」の五要素からなるものと定義しています(文化庁「100年フード」紹介ページより)。一口大の豚肩ロースとくし切りの玉ねぎを交互に串へ刺し、炭火で焼き、甘めのつけダレと洋がらしでいただく。これが基本形です。店によっては塩焼きも選べます。
まずこの3点——豚肉・玉ねぎ・洋がらし——だけ覚えておけば、初めての店でも注文に迷いません。
なぜ豚肉なのか — 1937年の室蘭で起きたこと
農林水産省「うちの郷土料理」によると、きっかけは1937年(昭和12年)の日中戦争です。食料増産のために養豚が奨励され、室蘭市では豚の肉と皮以外を市内で消費することが決められました。その結果、地元の屋台では豚のモツが多く扱われるようになり、豚の串焼きが「やきとり」として根づいていきます。
文化庁の紹介文では、室蘭のやきとり文化そのものは昭和8年頃の屋台から始まったとされています。製鉄業を支える労働者の胃袋を満たしながら、90年以上続いてきた味です。元祖とされる「鳥よし」は1937年に輪西町で創業しました(農林水産省)。
なぜ長ねぎではなく玉ねぎなのか
焼き鳥の「ねぎま」といえば長ねぎですが、室蘭やきとりに挟まっているのは玉ねぎです。理由は農林水産省がはっきり書いています。「北海道を産地とする玉ねぎの方が長ねぎより安価に手に入り、豚肉との相性も良い」から。北海道は玉ねぎの一大産地なので、地元で安く手に入るものを使った、という素直な話です。
ただし、ここにオチがあります。つけダレの材料は醤油・砂糖・長ねぎ・鶏ガラ・小麦粉など(農林水産省)。つまり串には玉ねぎ、タレには長ねぎ。「長ねぎを使っていないわけではない」というのが室蘭流です。ちなみに卓上の洋がらしは和がらしではなく、タレの甘さを切るための名脇役。頼まなくても添えられてくる店が多いです。
2026年、文化庁「100年フード」に認定された
2026年2月、室蘭やきとりは文化庁の「100年フード」(未来の100年フード部門〜目指せ、100年!〜・令和7年度)に認定されました。地域の風土に根ざした食文化を、100年を超えて受け継いでいくことを宣言した団体を国が認定する制度です。文化庁の紹介ページには「人口に対するやきとり屋の割合は日本一とも言われる」との一文もあります。
推進団体は室蘭やきとりの会(事務局は室蘭商工会議所)。室蘭市は学校給食に「室蘭やきとり丼」を導入するなど、市を挙げて継承に取り組んでいます。2026年8月22日・23日には「やきとりJAPANフェスティバル2026 in 室蘭」も開催されました(北海道初開催)。いま室蘭やきとりは、間違いなく追い風の中にあります。
札幌から車で食べに行くときの注意
札幌から室蘭までは約130〜140km、道央道を使って2時間弱が目安です。日帰り圏内ですが、車で行く人にいちばん大事な注意がひとつあります。
専門店は夕方17時開店が基本ということ。昼に室蘭へ着いても、専門店のやきとりはまだ食べられません。地球岬や白鳥大橋など室蘭の景色を昼のうちに回り、夕方に店へ向かうのが現実的なコースです。
そしてやきとりはビールと合わせたくなる食べ物です。運転する人は飲めないので、誰が運転するかを先に決めるか、泊まりにするか、後述のテイクアウトを活用してください。
食べに行くなら — 公式情報で確認できた店
加盟店は市内に多数ありますが、ここでは公式サイトで営業情報を確認できた店だけ載せます。
やきとりの一平 本店
- 住所:室蘭市中島町1丁目17-3(電話 0143-44-4420)
- 営業時間:平日・土 17:00〜23:00/日祝 17:00〜22:00
- 定休日:年中無休(12/31〜1/2のみ休業)
- 駐車場:15台/140席(いずれも公式サイトより・2026年8月時点)
元祖とされる鳥よし(輪西町)も健在ですが、公式サイトでの営業情報が確認できなかったため、訪問前に電話等でご確認ください。
買って帰る・家で食べる
意外に思われますが、室蘭やきとりは家庭ではほとんど作られません。居酒屋や専門店で食べるものとして定着していて、大人数で集まるときは専門店からテイクアウトするのが室蘭流です(農林水産省)。車で行くなら、このテイクアウト文化はむしろ好都合。運転で飲めない人も、持ち帰って家でゆっくり楽しめます。一平にはオンラインショップもあり、通販でも取り寄せられます。
よくある質問
Q. 玉ねぎも食べるもの?
A. 食べます。豚肉と一緒に串から外さず食べるのが室蘭流です。鶏やきとりのつもりで頼んだ道外の人が、玉ねぎの存在に驚くのはお約束です。
Q. 洋がらしは何のためにある?
A. 甘めのタレの味を切るためです。和がらしではなく洋がらしで、卓上に置かれていたり最初から添えられてきたりします。まず何も付けずに一口、次に洋がらしで一口、が楽しい食べ方です。
Q. 美唄のやきとりとは違うもの?
A. 別物です。同じ北海道でも、美唄やきとりは鶏のもつを1本の串にまとめて刺すスタイル。室蘭は豚肉+玉ねぎです。美唄方面は岩見沢・美唄・滝川ドライブコースの記事で触れています。また、函館の「やきとり弁当」も豚肉なのに「やきとり」を名乗る仲間です(函館やきとり弁当の記事)。
Q. 昼に室蘭に着いたら食べられない?
A. 専門店は17時開店が基本なので、昼は難しいことが多いです。昼のうちに観光を済ませて夕方に店へ、が定番コースです。営業時間は店ごとに異なるため、訪問前に公式情報をご確認ください。
※ お出かけ・お手続きの前にご確認ください
掲載している内容は執筆時点の情報です。営業時間・料金・定休日・開催日程・制度などは変更されることがあります。
ご利用の前に、公式サイトなど最新の情報を必ずご確認ください。
出典・参考:農林水産省「うちの郷土料理」室蘭やきとり/文化庁「100年フード」北海道の認定一覧/室蘭やきとりの会/やきとりの一平。北海道のローカルグルメ全般は札幌ローカルグルメガイドもどうぞ。




