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ザンギ発祥は釧路か函館か|1937年・陶陶亭と1960年・鳥松、終わらない論争
ニュース・コラム2026-08-21

ザンギ発祥は釧路か函館か|1937年・陶陶亭と1960年・鳥松、終わらない論争

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北海道でいちばん論争になる食べ物は、たぶんザンギです。

味の話ではありません。「どこで生まれたのか」が決まっていないのです。

有力なのは釧路と函館の2説。しかもこの2つ、年号が23年もずれています。片方は1960年、もう片方は1937年。それなのに、どちらも「うちが発祥だ」と決着させる資料が出てきていません。

この記事では、その論争の中身を両側から見ていきます。そして最後に、車で両方の街へ行く場合の距離を並べます——札幌からの距離がほぼ同じ、という偶然も含めて。

なお、「ザンギとから揚げは何が違うのか」という話は別の記事にまとめています。

公的な資料はどう書いているか

まず、いちばん硬い情報から見ます。農林水産省の「うちの郷土料理」に、北海道のザンギが載っています。

そこにはこう書かれています——昭和30年ごろに釧路市の末広歓楽街に店を構えていた鶏料理店が、鶏一羽をぶつ切りにして唐揚げにしたのがはじまり、と。

ただし注意してほしいのは、農林水産省自身が「といわれている」という書き方をしている点です。国の資料でも断定していない。この一点が、この論争の性格をよく表しています。

そしてもう一つ。農林水産省は「昭和30年ごろ」、つまり1955年前後と書いています。あとで出てくる釧路説の店の創業は1960年(昭和35年)公的資料と店の伝承の間でも、すでに5年ほどずれているわけです。

名前の由来——中国語の「炸鶏」に「ン」を足した説

発祥の話に入る前に、名前の由来を押さえておきます。こちらのほうが説としてまとまっています。

有力とされるのは、中国料理で鶏の唐揚げを指す「炸鶏(ザーチー/ザーギー)」が元になった、という説です。そこに「運がつくように」という願いを込めて「ン」を足し、「ザンギ」になった——農林水産省の資料もこの説を紹介しています。

料理名に一文字足して縁起を担ぐ。本当なら、ずいぶん商売人らしい命名です。

これも「説」であって確定した語源ではありません。ただ、中国料理由来という線は、このあと出てくる函館説とつながります。

釧路説——1960年、ネオン街の焼鳥屋「鳥松」

釧路側の主役は、鳥松(とりまつ)という店です。

1960年(昭和35年)、釧路市内のネオン街で開業した焼鳥屋。ここがブロイラーを使った骨なし・骨ありの鶏の唐揚げを「ザンギ」の名で売り始めたとされています。

この説の強みは、店が今もあることです。発祥を名乗る店が実在し、2代目が同じ料理を出し続けている。伝承が生き物として残っているのは大きい。

そして時代背景も噛み合います。1960年前後は、ブロイラーの流通が広がって鶏肉が安く手に入るようになった時期です。「一羽をぶつ切りにして揚げて出す」という料理が商売として成立し始めるタイミングと重なります。

ただし——この釧路説について、地元メディアのSitakke(HBC北海道放送)は、店がその料理を売り始めた事実はあるものの、そこが発祥だと示す明確な根拠は存在しない、と整理しています。「店がその料理を出していた事実」と「そこが発祥である証拠」は別、ということです。

鳥松に行くなら

釧路市栄町にあります。夜の街の店らしく夕方からの営業とされていますが、営業時間や定休日は変わることがあります。札幌からは片道4時間半の遠征になるので、出発前に必ず電話などで最新の営業状況を確認してください。

函館説——1937年、大門の中華料理店「陶陶亭」

もう一方の主役は函館です。

1937年(昭和12年)、大門の柳小路で創業した中華料理店「陶陶亭(とうとうてい)」。総料理長を務めていた王鴻吉という人物がいて、その弟子たちがレシピを受け継いだ、という筋が函館説の根拠とされています。陶陶亭そのものは平成元年(1989年)まで営業していましたが、いまはもうありません。

こちらの強みは年号です。1937年は釧路説より23年早い。そして中華料理店であるという点が、さきほどの語源の説——中国語の「炸鶏」由来——と素直につながります。中国料理の鶏の唐揚げが、中国料理店から広まった。話として筋が通っています。

しかしSitakkeの同じ記事は、函館説についても、伝承はあるが発祥の根拠には至っていない、と釧路説と同じ評価をしています。そして論争の行方についてはこう書いています。

この「函館か?釧路か?」の論争に終わりはないだろう

なぜ決着しないのか

整理すると、こうなります。

釧路説函館説
鳥松(焼鳥屋・現存)陶陶亭(中華料理店・1989年閉店)
1960年(昭和35年)1937年(昭和12年)
内容ブロイラーの鶏唐揚げを「ザンギ」の名で販売総料理長・王鴻吉の弟子がレシピを継承
強み店が現存し、料理も続いている年号が23年早く、中国料理由来の語源説と整合
弱み発祥を示す明確な根拠がない同じく発祥の根拠には至っていない

決着しない理由は、はっきりしています。どちらも「その店がその料理を出していた」ところまでは追えるのに、「そこが最初だった」を示す文書が出てこないからです。

町の食べ物というのはそういうものです。誰かが特許を取ったわけでもなく、看板に「本日より新メニュー・ザンギ」と書いた紙が保存されているわけでもない。気づいたら街に広がっていた。

だから、この論争はおそらく終わりません。そしてそれは、この料理が誰か一人の発明ではなく、街の中で育った証拠でもあります。

釧路の派生形「ザンタレ」

もう一つ、釧路側から出た文化があります。ザンタレです。

ザンギに甘辛いタレをかけたもの。名付けたのは釧路の南蛮酊(なんばんてい)という店の店主とされています。

札幌で暮らしている人が釧路で「ザンギ」を頼んで、タレがかかった状態で出てきて驚く——これが起きます。同じ道内、同じ料理名なのに別物が出てくる。発祥論争が続いている土地は、派生形も生き続けているわけです。

(南蛮酊・鳥松ともに、営業状況は変わることがあります。行く前に確認してください。)

両方の街へ、車で行くと

ここで面白いのは、札幌からの距離がほぼ同じだということです。

行き先主なルート距離の目安所要時間の目安
釧路道央自動車道 → 道東自動車道約310km約4時間半
函館道央自動車道 → 函館方面約310km約4時間半

論争している2つの街が、札幌からちょうど同じくらいの距離にある。北海道の広さを実感する数字でもあります。

どちらも日帰りは厳しい距離です。往復で9時間、そこに食事と観光が乗ります。一泊するか、途中の街で区切るのが現実的です。

運転の注意点:

  • 釧路方面は道東自動車道。トンネルと山越えが続く区間があり、秋以降は路面凍結の始まりが早いです。給油は早めに
  • 函館方面は距離のわりに単調な区間が長く、眠気が敵になります。休憩を先に予定に入れておく
  • どちらも高速料金がそれなりにかかります。目的が「一皿食べる」なら、他の目的と組み合わせる旅程にしたほうが満足度は上がります

釧路・函館で1泊するなら

札幌からはどちらも片道4時間半ほど。ザンギ一皿のために日帰りで往復するより、街をゆっくり回って一泊するのが現実的です。宿の予約はこちら:
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ドライブ全体の話は、ジンギスカンのタレの記事もどうぞ。余ったタレはザンギの下味にも使えます。

よくある質問

Q. 結局、ザンギの発祥は釧路と函館のどちらですか?

決まっていません。釧路説(1960年・鳥松)と函館説(1937年・陶陶亭)のどちらにも伝承はありますが、発祥を裏づける決定的な資料はどちらからも出ておらず、農林水産省の資料も「といわれている」という書き方で断定を避けています。

Q. ザンギとから揚げは何が違うのですか?

味付けの濃さなどいくつかの説明がありますが、公式な定義や線引きは存在しません。この話はザンギとは – 北海道が誇る唐揚げ文化の秘密で詳しく扱っています。

Q. ザンタレとは何ですか?

ザンギに甘辛いタレをかけた釧路の食べ方です。名付け親は釧路の店「南蛮酊」の店主とされています。釧路では「ザンギ」を頼むとタレがかかって出てくる店もあり、初めてだと驚きます。

Q. 札幌から発祥の店まで車でどれくらいかかりますか?

釧路(鳥松がある街)まで約310km・高速利用で約4時間半です。函館もほぼ同じ約310km・約4時間半。どちらも日帰りは強行軍になるので、一泊する前提で計画するのがおすすめです。

まとめ——決まらないから、面白い

ザンギの発祥は、釧路説(1960年・鳥松)と函館説(1937年・陶陶亭)の2つが有力で、どちらも決定的な根拠が出ていないまま論争が続いています。名前の由来は中国語の「炸鶏」に運の「ン」を足した説が有力で、これは函館の中華料理店説と筋が通る一方、公的資料が紹介する発祥の地は釧路。きれいに割れています。

「どっちが発祥か」は決まっていません。でも、決まっていない食べ物のほうが、話していて面白い。次に居酒屋でザンギが出てきたら、この話をしてみてください。

※ お出かけ・お手続きの前にご確認ください
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